【暗転】
オープニングムービー
Flash 8 形式 3.07MB − (別ウィンドウ表示)
ストリーミング形式 11.0MB − (WMV形式)
BGM作曲者上野権也
委員長挨拶 「It's show time!!!!!!!!!!!!!!!!!」
蝉の声
登場人物
人物名 トシオ 聡美 加奈子 ウィリアム 先生
説明 高校2年 高校2年 高校2年 高校2年?(謎 国語の先生
司書希望の学生 トシオの友達 トシオの友達 留学生? 熱血漢教師
【明転】
トシオと先生が立って何か読んでいる
トシオ 「『メロスは激怒した。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『メロス、僕をなぐってくれ。』
(先生殴る)
トシオ 「痛い本気で殴らなくていいじゃないですか」
先生 「うるさい。としお、そんなんじゃ、りっぱな俳優になれんわ。」
トシオ 「先生、僕は俳優になりたいんじゃない。
図書館に勤めて子供たちに物語を読み聞かせたいだけなんだ」
先生 「じゃあ、お前に聞くが、物語ってそもそもなんや?
トシオ 「…(答えられない)」
先生 「こんなんじゃ、立派な司書にはなれんぞ!いいか、物語とはな」
【暗転】
[ナレーター席スポットライト]
【明転】
ナレーター1 物語とは、二つ以上の物事を結びつけたもの。
人に何かを伝え、人の心に影響を与えるもの。」
先生 「どうや、わかったか」
トシオ 「まぁ…だいたいは」
先生 「なんや、その気の乗らん返事は。んなら、なんで読み聞かせしたいんや?」
トシオ 「…えーと…」
先生 「考えてえんのか。そんなら話にならんわ。読み聞かせしたい理由が見つかるまで、ちょっとそこで考えろ」
(先生がステージ袖に消えていく。としおは教室に残る)
トシオ 「はぁぁ…理由って言われてもなぁ。どうしよう」
(そこへ加奈子と聡美が登場)
聡美 「どうしたの?」
トシオ 「あ、聡美と加奈子か。いや…俺が司書志望なのは知ってるだろ?
いろいろあって部活の先生になんで読み聞かせをしたいのか聞かれたんだけど…」
加奈子 「答えられなかったんだ」
トシオ 「うん。なんとなく、小さい子に読み聞かせしたいなって思ってるだけで、
はっきりとした理由は考えてなかったんだ・・・なんて答えよう?」
聡美 「うーん、難しいね・・・・・あ!!こういうのはどう?最近、若い人たちの間で
読書離れが進んでるって言われてるでしょ。
それと一緒にモラルの低下も言われてるの。例えばその二つを結びつけてみるとか…
加奈子 「じゃあ、『若い人たちのモラルが低下しているのは読書離れが進んでるから、それを食い止めるため』とかにしたら?」
トシオ 「そうだね。ありがとう、聡美!加奈子!!」
聡美・加奈子 「どういたしまして」
トシオがステージ袖に走っていく
【暗転】
【明転】
トシオ 「先生、理由が見つかりました!!」
先生 「なんや、えらい早いなぁ。まぁ、ええわ。言ってみ」
トシオ 「え、とですね。最近の若者はモラルが低下してるっていわれてるじゃないですか、
で、その理由が読書離れにあると僕は思ったわけです」
先生 「ほう、で?」
トシオ 「だから、若者のモラル低下を防ぐべく僕は司書になろうと思います」
先生 「んーなんか、えらく飛躍しすぎやないか? そもそもお前、
さっきからモラルモラル言うてるけど、
モラルって何か分かってて言ってるんか?
トシオ 「えー…、道徳、じゃないしなあ」
先生 「はっきりとは分かっとらんのか。モラルっていうのはな」 
[両脇スポットライト]
ナレーター モラルとは、自分勝手な振る舞いを耐えることができ、
他人あるいは社会に対する迷惑な行いや危害を及ぼす行いをしないことで、モラルのすべては自己意識に依存します
そして、モラルとはその国その時代の人々や文化によって形成されます。
トシオ 「へえ、モラルってこういうものだったんですね」
先生 「そんなことも知らんとよう言えたな。これで2つを結びつけることがどんだけ飛躍してるか分かったやろ?」
トシオ 「どうしてですか?僕はやっぱり関係あると思いますよ」
ナレーター1 「このままだと、らちがあかないようなので私のほうから説明させてもらいます。
みなさんは、本を読むことで、常識や想像力が身に付くと思っていませんか?
想像力というのは、他人の気持ちを考える力にもなりますよね。
読書離れが進んでいることで想像力がなくなった結果、
他人の気持ちを思いやる力、モラルが低下してるんじゃないかと
私たちも考えていました。ところが・・・・・・・」
市立図書館司書 坪内さんインタビュー
ナレーター 「他にも2人の方にインタビューを行いましたが、
どちらの解答も『つながってはいない』というものでした。
読書離れとモラルの低下がつながっていない理由はモラルの性格にあります。」
トシオ 「性格う?」
ナレータ− 「はい。さきほど、モラルが文化と密接に関わってるということを言ったと思います。
確かに、としおくんの言ったことにも一理あるのですが、
初めから読書をする習慣や文化がない国はどうなるのでしょう?
モラルの低下は起こらないのでしょうか?
トシオ 「でも僕が言ってるのは読書をする文化がある『日本』だし」
ナレーター 「日本においてその読書をするという文化が一般人の間に普及したのは明治から。
多く見積もっても140年ぐらい前からでしょうか。
そう考えると、それまでモラルはなかったのでしょうか?
モラルとは、おじいさん、おばあさん、両親、まわりの大人たちから受け継がれてきたものなのではないのでしょうか?
トシオ 「ううん、そう言われるとそうだけど」
ナレーター 「そもそも読書という行為は他人の考えた過程を反復的にたどる行為にすぎません。
モラルを身につけるために読むものではなかったはずです。
そして読書のあり方自体が今は娯楽的なものに変わってきているので、
たとえそこにモラルが隠されていたとしても、
本を読んでもそれに気付くことは少ないのではないか、という指摘も受けました。」
先生 「そうそう。わしはそれが言いたかったんや」
トシオ 「本当ですかぁ?でも確かにたくさん本を読んでる人が必ずモラルがある人かって
言うと、そうは言えないですもんね」
先生 「モラルは本から学ぶもんやない。人との関係から学ぶもんやからな。
だからって言って 読書が意味のないものだっていう訳やないんやぞ。
お前が言った『常識や想像力がつく』はあながち間違ってるわけやない。」
トシオ 「ですよねっ!」
先生 「そういえばお前 けっこう本読んでるなぁ」
トシオ 「なんたって司書志望ですから!
先生 「しかし最近の高校生はどうなんや?」
【暗転】
両脇スポットライト
ナレーター1 「そこで藤高生のみなさんにアンケートを取ってみました。」
ナレーター2 「読書自体は、男子も女子も好きという割合が高いみたいですね
ナレーター1 「ただ、男子のほうが嫌いな割合が高いようです  
ナレーター2 「男子の場合、子供の頃の読書嫌いがそのまま治らないようです。
女子の場合は、昔はたくさん読んでても今はあまり読んでない子が多いみたいですねそれではみなさんはどのようなものを読んでるのでしょうか?
ナレーター1 「やっぱり男子はSFが好きな傾向があるみたいです
ナレーター2 「では、最近いろんな国の物語が日本にあります。どういうのが好まれるんでしょう?
ナレーター1 「なるほど。男子は女子に較べて自分の能力で勝利をつかみ取っていく中国の物語に魅力を感じるのですね」
ナレーター2 一方、女子は西洋が好きみたいですね。お姫様、王子様への憧れがあるんでしょうかね
ナレーター1 「そこで藤高生のみなさんと、先生に『憧れているキャラクター』と『自分に似ているキャラクター』についてインタビューしてみました。」
先生・生徒インタビュー
ナレーター2 「みんな自分にないものを持ってるキャラクターに憧れてるようです
先生 「・・・とにかく読み聞かせしたい理由をもう1回考えてきい。
『読み聞かせ』したい(強調)理由をな」
トシオ 「…はい」    
トシオがすごすごとステージ袖に帰っていく 
スポットライト消える
【明転】
教室場面
聡美 「おかえりー」
加奈子 「どうだったの?」
トシオ 「うん…もう1回考えてこいって」
加奈子 「・・・ところで読み聞かせしたい理由はどうするの?」
トシオ 「うう〜ん。そういやそれを強調してたな」
聡美 「それが理由を考える鍵になるんじゃない?」
加奈子 「でも読み聞かせってなんか懐かしいなぁ。」
聡美 「小さい頃に読んだ本て今でも記憶に残ってるんだよね。例えば『ぐりとぐら』とか」
加奈子 「私も読んでもらった!他の人はどんな本を覚えてるのかな?」
ナレーター 「藤島のみなさんは、こんな本が印象に残っているそうです  
【暗転】
[スポットライト]
トシオ 「みんな、小さい頃に読んでもらった本を案外覚えてるもんだなあ」
聡美 「だよね。小さい子に本を読んであげると、すごく楽しそうだもんね」
加奈子 「小さい子に読み聞かせすると『字を覚えるのが早い』とか『知識が増える』とか言うけど、それ以外に何かあるのかな?」
聡美 「う〜んわかんない。もっと読み聞かせの効果について詳しい人の話を聞いてみたら?」
ナレーター 「そういうわけで、3人は読み聞かせの効果を聞きに加奈子の知り合いのもとに行ってみることにしました。
【暗転】
田岡さんインタビュー
【明転】
トシオ 「読み聞かせにそんな効果があるなんて思わなかったな」
聡美 「そうだね。特に0〜7歳は人格形成の基礎が築かれる時期だって聞いたことあるし」
トシオ 「ええ!じゃあ、もう俺たち高校生は人格を直すことはできないのか?」
加奈子 「そんなことないよ。21歳までに人格が決定されるらしいから、まだ間に合うと思うよ」
トシオ 「よかったー。そういえば、読み聞かせの効果的な方法も言ってたよな」
聡美 「確か、絵を見せながら、心を込めてゆっくり読み聞かせるといいんだよね?」
加奈子 「そうすると、読んでる人も、聞いてる人も一緒に物語の内容を生き生きとイメージすることができるのが1番重要なんだって言ってたよね」
トシオ 「俺、今までなんとなく『読み聞かせは良いもんだ』って思ってたけど具体的には何も知らなかったよ、聞いてよかった。
前よりも子どもたちに『読み聞かせをしたい』っていう気持ちも強くなったし。何よりも明確な理由ができたからね」   
がらがら(扉があく音)⇒(ウィリアム入場)
ナレーター1 「彼はウィリアム。としおたちの高校に通う留学生です。
ウィリアム 「おおう、としおたちじゃないですか!どうしたんですか、こんなところで?」
トシオ 「かくかくしかじかで先生に読み聞かせしたい理由を話しに行くんだ」
ウィリアム 「そうだったんですかー。じゃあ、としお。これからもっと本の勉強をしないといけませんね。さっそく今から勉強しましょう!」
ウィリアムがなぞの本を開く[暗転]
トシオ 「は?今からは無理だろ…ってわあああああああああ」
3人 「わああああああああああ」
【明転】
トシオ 「いてててて・・・なんだこれ・・・あ、ウィリアム、何だったんだあの本は?」
ウィリアム 「ひみつで〜す。それよりここがどこか分かりますか?」
ナレーター1 「え?あ、あれ、ここどこ?カナコとかは?」
ウィリアム 「ここは、ある物語の世界です。ところで、物語がいつできたかとか、知ってますかぁ?」
トシオ 「・・・む、むかしむかし?」
ウィリアム 「だめですねえ・・・じゃ、ナレーターさん頼みます」
トシオ 「お前が教えてくれるんじゃないのかよっ」
【暗転】
【両脇スポットライト】
ナレーター1 「はい、というわけで、『物語のでき方』を紹介します。
今からおよそ500万年前、人類が地上に生まれ、さまざまな面で成長して来ました。物を考えるようになったから。
それと同時に人は自分の存在に疑問を持ち、自分で考えて自らの存在理由を作り、それを真実のように決めてしまいました。そうして生まれたのが、『神話』です。
人間は誰でも、最初に自分のアイデンティティを求める生き物なんですね。」
トシオ 「ふーん、そういえば神様は7日で世界を作ったとか、聞いたことあるな」
ウィリアム 「トシオは、その話信じてますか?」
トシオ 「ま、ちょっとはね」
ナレーター 「それから、『軍記物』『風刺物』『民話』などのいろいろなジャンルが生まれてきます。
軍記物は、英雄の活躍などを残すため
風刺物は、大々的に主張することはできない不満を和らげるため、
民話は、民衆の貴族への憧れや、国民性が表れていたりします。
国家の本質を国民に伝えるために出版されたこともあります。」
【両脇スポットライト消える】
【明転】
トシオ 「物語はちゃんとした目的があって作られたってこと?」
ナレーター 「まあ、そうですね。人が無意識におこなってきたことですが、物語は人が成長するにつれて、そのジャンルを広げてきたんですから。」
ウィリアム 「昔の人のいろんな気持ちが込められてるわけですね。
トシオ 「気持ちかあ・・・現代文とかでさ、『気持ちを読み取れ』って問題があるけど・・・いつも当たらないよ俺」
ナレーター 「う〜ん・・・現代の小説は人物の気持ちが明確に書かれているものが多いですし、テストに出るときはそれが明らかな場合のみですよ。けれど、昔の小説などでメッセージが明らかな部分以外などでは、解釈は無限に広がります。」
トシオ 「ふうん・・・やれるもんなら、やってみたいなそういうの」
ナレーター 「そうですね・・・皆さんが必ず知っていて、解釈が広げられるものと言えば童話ですね。」
トシオ 「童話?シンデレラとかそういうの?」
ナレーター 「はい。じゃあ、ちょっと変わった方面からの解釈、一つ紹介しましょうか。」
トシオ 「はい」
シンデレラが出てくる
【会場全体を明転】
【シンデレラスポットライト】
ナレーター 「では、あなたが今言った物語で解釈してみましょう。
トシオ 「え・・・シンデレラ?ほんもの?」
ナレーター1 「だから、ここは物語の世界だって言ったでしょう。」
トシオ 「信じらんないけど、そうなんだ・・・」
シンデレラ 「こんにちは。私のこと、知りたくないですか?」
トシオ 「知りたいです!」
シンデレラ 「よかった。・・・じゃあ、ナレーターさんお願いしますね。(ニコリ)」
トシオ 「またそれ?」
【暗転】
【両脇スポットライト】
ナレーター 「はい、じゃあシンデレラのことを軽く説明しておきますね。
シンデレラには大きく分けて『ペロー版』と『グリム版』があり、『ペロー版』のほうは上流階級向けに、お上品に作られています。皆さんが知っているのはどちらかというと『ペロー版』です。対する『グリム版』のほうは民衆で語られていた本来の内容に近いものです。なので、私達は本来のものに近い『グリム版』を真のシンデレラとして調査してみました。」
シンデレラ 「みなさん、そろそろ眠たそうなので、ここはクイズで紹介していきたいと思います。」
ナレーター 「シンデレラは裕福な家に生まれました。しかし皆さんご存知の通り、幼い頃に母を亡くし、

今では継母と義姉にいじめられる毎日・・・。 さて、そこで問題です。

皆さんが知っているシンデレラには描かれていないいじめの方法があります。それは次のどれでしょう。 」
@ ひたすら暴力
A かまどの中に豆をぶちまけ拾わせる
B 笑いながら母の墓荒らしをされた
ナレーター 「皆さん考えました?それでは正解は・・・
Aかまどの中に豆をぶちまけ拾わせる、です!
だから灰まみれになってしまったんですね。」
トシオ 「豆?こんなのでてきたっけ。」
ナレーター 「ええ、グリム版では。あ、そうそう、『豆』と『かまど』というのは新解釈のキーワードとなってくるものです。後で説明しますので、ちょっとだけ覚えておいてください。」
トシオ 「はあ」
ナレーター 「つづけます。 ある日父が街へ行くことになり、

お土産は何がいいと訊かれました。シンデレラは何がいいと言ったでしょう。」
@ 最初に触った木の枝
A 最初に会った人間
B 新しい母親
ナレーター 「う〜んどうでしょう。・・・正解は・・・@最初に触った木の枝、です!
姉達は『ドレスがいい』といったらしいですが、謙虚ですねあなた。
このとき父は『ハシバミの木』をもってかえり、シンデレラはそれを母の墓のそばに植えます。 
木はぐんぐん大きくなったそうです。この『ハシバミの木』もキーワードとなります。」
ナレーター 「第3問目。その頃お城では、王子の花嫁探しが行われています。パーティーは3日間。
しかしシンデレラにはばっちい服しかないので行けませんでした。ここで普通なら魔法使いが出ますが、グリム版では違います。では、どうやってドレスを得るのでしょう。」
@ ハトが持ってくる
A タンスからパクる
B 田原町商店街で購入
ナレーター 「これは簡単ですね。正解は・・・B田原町商店街で購入!
・・・ではなく、@ハトが持ってくる、です!
母の墓の前でないていたら、例の『ハシバミの木』に止まっていたハトたちが、もって来てくれたんです。『ハト』もキーワードです
ナレーター 「パーティー最後の日、王子はどうしても私をゲットしたくて、階段に松ヤニを塗ってわざと靴を脱がせます。王子は私を探しに出かけ、うちにも来ます。姉さん達は何とか足を入れようと、
指やかかとを切ってまで靴を履きますが、当然くつに血がにじんで、ばれます。」
ウィリアム 「Oh!!グロテスクね」
ナレーター 「靴をはけたシンデレラはその場で王子の嫁になることが決まり、結婚式が行われます。
すると、なぜか姉達もいかにも親しげに結婚式に参加してきます。かかととか切ったのに、いたくないんですかね。皇室入りを狙っていたのでしょう。その欲を見抜いてか、なんと最後、ハトが再び現れて姉達の目をついばんでしまいます。グリム版はとにかく残酷ですね。
ウィリアム 「盲目的にものを考えていた彼女たちに、目には目を、という感じの罰ですネ」
シンデレラ 「そして私は、末永く幸せに暮らしたのでした。おしまい!」
ナレーター 「はい、グリム版は実はこんな話だったのです。では、さっそく新解釈にうつりましょう。キーワード、覚えてますか?」
トシオ 「確かキーワードは・・・『何とかの木』と、『ハト』と・・・『豆』?」
ナレーター 「ここまでで紹介したキーワード「豆」「かまど」「木」というのは、なんと、神話の世界において、
『あの世とこの世をつなぐ媒介』という役割のとして扱われているのです。」
ウィリアム 「豆ならとしをにもわかりますよね。トシオも節分には豆をまくでしょ?豆というのは、鬼、つまり死者の世界とのコミュニケーションなんです。豆まきは古代ギリシャにもあるんですよ」
ナレーター 「あとの『かまど』『木』も、神話では同様の働きを示すものとされています。そして、『ハト』つまり「鳥」は森の生き物なのに人間界でも行動しますから、それも媒介的存在ですよね。」
トシオ 「え、でも死者の世界って・・・シンデレラに関係ある?」
シンデレラ 「ええあります。私の生みの母は、天国にいるんです。つまりね、あらゆる媒介的なものがつながって、 私と母の霊を結び付けて、私を幸せに導いたんじゃないかって、考え方もあるんです。母の愛です。 ほんとにそうなら、私もうれしいですけど」
トシオ 「・・・なんか、すごいなあ新解釈・・・けど知識がないとできないんじゃ・・・」
ウィリアム 「そんなことはないです、自分の経験しだいですよ。物語を膨らませるのは自由なんですから」
トシオ 「じゃあさ、物語には『無限の可能性』っていう価値がある・・・ってことかな?」
ウィリアム 「Oh、いい事言いますねトシオ。わかってくれましたか。」
【照明 地明かりに戻す】
シンデレラ 「お役に立ててよかったわ。・・・じゃ、お茶でもどう?
ウィリアム 「(シンデレラに)どうもデス。でももう帰らなければ。ほらトシオ、行きますよ。」
ナレーター 「さて、こちらはさとみが飛ばされた世界。彼女はどこに着いたのでしょうか?」
聡美 「ねえ、ウィリアムくん、ここどこ?中国っぽいけど。」
ナレーター 「そう、ここは中国。今日は7月7日。そうたなばたです。恋人たちには待ち遠しい日であるはずなのに、今年はあろうことか、日本の織姫と、中国の彦星が出あってしまったようで、戸惑っているようです。」
聡美 「え〜っ織り姫と彦星って共通じゃないんですか。どう違うのか教えてもらえませんか?」
織姫 「いいわよ。じゃあ…ナレーターさん。」 
ナレーター 「まず彼等の名前は紀元前周の時代の『詩経』最初に登場します。しかしそこでは二人は出会っていません。
後漢の時代になると「史記」に織女が最初の夫である彼と別離してしまう、という話が付け加えられます。
そしてその後もいろいろな話が作られ、最後に南北朝の梁時代に、それまでの話がまとめられたのです。」
聡美 「し、知らなかった。今の中国の話はどんな感じなんですか。」
織姫  「私は昔まじめに機織仕事してた女だったのよ。化粧っ気も男っ気もなくね。そしたらお父さんが見かねて真面目な牽牛さんと引き合わせてくれたの。そしたら今度はラブラブになりすぎて何にも仕事しなくなっちゃって。引き離されちゃたってわけ。 父さんもちょっとはかわいそうに思ったのか7月7日だけ私が会いに行っていいって言ってくれたけど・・・ やっぱり課せられた仕事をサボるものじゃないのね。」
聡美 「じゃあ、日本の話はどんなのですか。」
彦星 「そうだな、日本にも色々なのあるんだが、大体共通してるのは、私はただの人間だ。っていうとこだな。 私は山で仕事をしていたんだが泉の近くの木にきれいな羽衣がかかっていたんだ。絶対天女のものだと思ってさ、隠したんだ。」
聡美 「羽衣伝説じゃない。」
彦星 「そうなんだよ。日本の物語は中国から来た話と、羽衣伝説を合わせたものなんだよ。その後、私と彼女は結婚するんだがまあ、ご存知のとおり隠してあった羽衣を見つけだされて彼女は天に帰っていっちゃった。
聡美 「さみしーい。」
彦星 「まだ続きがある。私の前に占い師が現れて、彼は千足のわらじを作って土に埋めてその上にヘチマを植えれば天に届くといったんだ。」
ウィリアム 「で、やったと。」
彦星 「もちろん。それで天に着いたのはいいんだが彼女のお父さんとのご対面。
そしてそこで出された瓜を切ったらそこから水があふれ出て天の川になってしまったのさ。
そして一年に一回だけ会いに行くことが許されたってわけだ。」
ナレーター 「他にも明らかな違いといえば、雨の日。
中国では、雨でもカササギが運んで二人を会わせてくれるのですが、 日本ではカササギが登場はしない。というのは、
日本人は無常観を大切にしているからで、 雨で会えないのならばしかたないと潔く諦める話になったのです。
また、中国は、女性が男性のところに行くのに対し、日本は男性が女性のところに行くのは、当時の妻問い婚の影響のようです。」

聡美 「なるほど、元はおんなじ物語でも訪れた国によって物語は変化するんですね。」
彦星 「男女が離れ離れになるシーンはどちらもあるよね。」
ナレーター 「はい。七夕物語が日本に伝わった頃は遣隋使や遣唐使等で男性が日本海を渡って行った時代でした。また当時の中国も戦が頻繁に起こっており、男は兵士として無理矢理徴収され、戻ってこれなくなることもありました。 つまり両国とも恋人を隔てる空間を天の川にみたてて恋の悲観や報われない思いをこの物語から感じたのです。」
織姫  「いくら2人の気持ちが通じていても遂げることのできない悲痛な思いが共通していたから
七夕物語は日中ともにこんなに広まったんでしょうね。」
聡美 「物語はその国の特色、国民性をあらわしている一方で、人間の心の根底にある変わらない思いをもこめられているんですね。共通すること、違うこと、その二つからその国のことを理解できる。物語ってすごいと思うわ。これからはそういうことも考えて本を読んでいこうかしら。」
彦星 「それがいいね。」
聡美 「ところで織姫さん。この彦星さんについてはもういいんですか?」
織姫  「え?ふふっ、あなたの話を聞いていたら彼との考え方の違いに怒るのは馬鹿らしくなっちゃった。」
聡美 「そうですか〜よかった。」
ウィリアム 「では戻りましょうか〜。」
ナレーター 「さて、加奈子さんはどんな世界に着いたのでしょうか?」
加奈子 「あれここどこ?ねえ、ウィリアムどういうことなの?」
ウィリアム 「ここは物語の世界です。」
加奈子 「なにそれ?」
ウィリアム 「ここは浦島太郎の世界です。ここの世界は、3人の浦島太郎が争う世界なのです」
加奈子 「なにそれ?浦島太郎って3人もいるの?
ウィリアム 「そうなのです。風土記、明治、御伽の3人です。いま誰が一番か3人が争っています。貴方が解決してください。 」
加奈子 「え〜〜〜。そんなことできないよ 。」
ウィリアム 「がんばるのです。」
風土記 「僕が一番だ」
明治 「いやおれだ。」
御伽 「私だ」
【暗転】
【明転】
加奈子 「あのちょっといいですか?静かにしてください。私が何とかしますから。貴方たちの状況を教えて。
先ずは風土記の浦島太郎さんから。」
風土記 「わかった。僕は実は浦島太郎っていう名前じゃなく「浦島子」って名前で実際にモデルがいるんだよ。
そして、本の題名も浦島太郎じゃなくて「水之江の浦島子」なんだ。
僕は『姿麗しく、風流なること類なかりけき』なんて書かれているように貴族なんだ。
ある日母を養うために、釣りに行ったんだ、けどつれるのは亀 、亀、亀。
何の役も立たないから3回とも逃がしたんだ。
でもその亀は仙女 で、プロポーズされちゃってね。参ったよ。
そして、その仙女に連れられ蓬莱山へ行ったんだ。」

加奈子 竜宮城じゃないの?
風土記 「うんそうだよ。その蓬莱山っていうのは竹取物語に出てくる蓬莱の玉の枝と同じだよ。」
加奈子 「へー 」
風土記 「そこで僕は彼女と一緒に3年ほど暮らしたんだけど、突然母のことが気になってね、1回帰ってみたんだ。 帰りに彼女から3つの「玉櫛笥」をもらってね。ちなみに玉櫛笥って言うのは、櫛などを入れる女の化粧道具入れのことだよ。     
でもね、帰ってみると、300年が過ぎていたのさ。そりゃびっくりしたよ。あまりにも、絶望したから、最後の希望であるもらった箱を開けてみたんだ。 一つ目の箱を開けたら鶴の羽が入っていて、二つめの箱を開けたら、煙が出てきて、僕は、翁になってしまった。そして、3つ目の箱を開けたら、鏡が入っていて、鏡をのぞいたら、背中に鶴の羽が生えてきて鶴になってしまったんだよ。それからね、蓬莱山の彼女の元に飛んで行ったんだよ。 」

加奈子 「もともとはそんな話だったんだ。じゃあ次は、御伽草子の浦島太郎さんのことを教えて?」
御伽 「わかった。俺もまた釣りにいって亀を釣るんだけどよ、その亀を殺すのが忍びなくて、にがしてやったんだ。そしたら次の日に俺んちに綺麗な女の人がきてよ、びびったぜ。その女が言うには漂流したんだとよ。
俺に好意があるのばればれだぜ。その女っていうのは、実は助けた亀だったんだ。」
加奈子 「へー」
御伽 「そんでよ彼女の故郷だっていう竜宮城にいってよ仲良く暮らしたんだが、やっぱ、おっかあが気になってよ、帰るわって彼女に言ったら、彼女が「前世からの縁で結ばれたのに別れたくないわ」っていって、なかなか離さなかったんだ。でも結局は彼女もあきらめて納得してくれてさ、最後に和歌詠んでいこうと思ったら、玉櫛笥を1つくれたんだ。で、かえってみると、700年も経ってたんだ。びっくりさ。
そこで、俺は玉櫛笥があったなと思い出し開けてみると、なんと俺が白煙と共に鶴になっちまったって話さ。」
加奈子 「なんか悲しいですね。」
御伽 「まてよこれには続きがあるんだ。鶴は千年っていうだろ?俺はある神社の神になったのさ。そしたら彼女も来て神になって二人で暮らしたっていう話だ。」
加奈子 「ハッピーエンドで終わったんですね。よかった。最後に明治の浦島太郎さんの話を聞かせて下さいよ?」
明治 「よかろう。元々は明治43年に当時の文部省が国定教科書として製作した「尋常小読本」の「ウラシマノハナシ」のことなのだが、 今、子供向けに出版されているほとんどの本がこの話をベースにしているだ
つまり一般に知られている浦島太郎だよ。」
加奈子 「なんでこんな違いがあるの?」
ウィリアム 「いい質問ですね加奈子。それはですね、できた理由が違うからなんです。 」
風土記 「そうだね。僕の話は史実に基づいて作られてるんだ。
そこに、日本の地域の特色や中国から伝来した神仙思想などが影響を与えて、 不老長寿を望んだり神仙や自然を敬う気持ちを表す作品になったんだよ。」
加奈子 「うんうん。」
御伽 「私のは、室町時代にできたから、日本的な仏教の考えが強くなっていき、神仙思想がなくなっていったからそれが反映しているし、 室町は騒乱時代だったから、
人々が楽しめるようにと娯楽用につくられたんだ。」
加奈子 「なるほどね。最後に明治は?」
明治 「わしの理由はな、子供たちに『動物愛護』や『いいことをすればあとから帰ってくるよ』、『約束はやぶっちゃだめだよ』という教訓を教えるためなんじゃ。また、竜宮場での怠惰な生活をやめるという内容は「富国強兵」の国政につながるんじゃ。 」
ウィリアム 「さあ加奈子一番を決めてください。」
加奈子 「それは無理だよ。」
ウィリアム 「なんでですか?」
加奈子 同じ浦島でも、その時代ごとの道徳観や、人々の願いが背景にあって変わっていくものなんだし。
どれが一番なんてきめるもんじゃないよ。
風土記 「そうか私たちの話はすべて人の思いの結晶、どれも大切なんだな、ありがとう。」
ウィリアム 「かなこさん、そこによく気づいてくれました。これで私の役目も終わりです。」
加奈子 え!?
【暗転】
【明転】
ナレーター 「みんな元の世界に戻ってきました。」   
トシオ 「や、みんな無事だった?」
聡美 「何とかね」
加奈子 「かなりびっくりしたけど」
トシオ 「ところでさ、さとみと加奈子はどこにいってたの?」   
加奈子 「私は日本の世界だった。」
聡美 「私は中国で七夕の話を聞いてきたの。としおはどこ?」
トシオ 「僕は西洋さ」
聡美 「せっかく、みんな別々の世界に行ったんだから分かったことを1つずつ言ってみようよ」
トシオ 「そうだね。まずは俺から。俺が分かったのは『物語は無限の解釈ができる』ってことだよ」
聡美 「私が分かったのは『物語は国や地域の思いが込められている』ということ」
加奈子 「私は『物語は時代の変遷とともに移り変わる』ってことが分かった」
トシオ 「あ、そういえば先生に読み聞かせしたい理由言ってこなきゃ」
聡美 物語が人格形成に影響を与えるってやつ?」
トシオ 「うん!じゃあ、ちょっと行って来る」    
加奈子 「あれ…そういえばウィリアムは?」
聡美 「本当だ。さっきまで一緒にいたのに。どこ行ったんだろう?」
加奈子 「実は妖精とか?」
聡美 「まっさかあ」   
ナレーター 「どうでしたか、みなさん物語という重要さがわかりましたか?みなさんにわかってもらえたなら、うれしいことです。
ではこれで今年の全体会は終わりですが来年、再来年もこうご期待ください
ウィリアム (声のみ) 「物語の妖精ウィリアムはいつかあなたの元に訪れるかもしれません。あー ははははははは」
ending movie

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